「浄化槽を新規に設置したいけど、年間どれくらいの費用がかかるの?」
「浄化槽を設置するときに使える補助金はあるの?」
上記の不安を抱えている人は多いことでしょう。
この記事では、浄化槽にかかる費用を工事方法ごとに解説します。
浄化槽の設置がお得になる、火災保険や自治体の補助金制度も紹介。
浄化槽を設置するときの注意点も解説します。
浄化槽の新規設置には、約80万円かかります。
保守点検や修理、撤去費用にも触れるので、最後までご覧ください。
なお、浄化槽の設置には火災保険を利用できる場合があります。
火災保険の申請には、建築や保険の専門知識が必要なので、申請サポート業者への依頼をおすすめします。
受け取った給付金は自由に使えるので、ぜひ以下のボタンをタップして無料診断を受けてみましょう。
※賃貸・区分・保険未加入は対象外
浄化槽を新築一戸建てに設置・交換する費用は80万円~
環境庁が定める標準タイプの浄水槽の新規設置または交換にかかる費用例を、以下の表にまとめたので、ご覧ください。
サイズ | 費用例 | 住宅の分類 |
5人槽 | 837,000円 | 130㎡(約40坪)以下 |
7人槽 | 104,3000円 | 130㎡(約40坪)以上 |
10人槽 | 1,375,000円 | 2世帯住宅 |
浄水槽は、住宅の分類によってサイズが規定されています。
一戸建ては5人槽の浄化槽が一般的です。
浄化槽の本体価格や工事費用を合わせると、80万円前後が相場です。
浄水槽の新規設置と交換にかかる費用は、ほとんど変わりありません。
ただし、トイレやキッチンなど水回りを改修する場合は別途工事費がかかります。
環境庁によると、浄水槽本体の耐用年数は30年です。
浄化槽の交換にかかる期間は3日~1週間程度です。
工事中は水が使用できない時間帯があるので、事前に確認しましょう。
浄化槽の年間維持費の目安は6万円~
浄化槽の年間維持費は6万円〜です。
環境庁が設定している、浄化槽の年間維持費の標準値は以下の通りです。
5人槽 | 7人槽 | 10人槽 | |
保守点検費 | 21,000円 | 22,000円 | 23,000円 |
清掃費 | 26,000円 | 35,000円 | 50,000円 |
法定検査費 | 5,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
その他 | 13,000円 | 19,000円 | 25,000円 |
合計 | 65,000円 | 81,000円 | 103,000円 |
ここでは、浄化槽の維持管理にかかる以下5つの費用について、詳しく解説します。
- 保守点検費:2万円~
- 清掃費:2万6,000円~
- 法定検査費:5,000円~
- ブロアの電気代:7,000円~
- 故障した場合の修理費用:7万円~
上記は浄化槽を適切に管理するために必要な費用なので、正しく把握しましょう。
①保守点検費:2万円~
浄化槽の保守点検にかかる費用は、年間2万円〜です。
保守点検は浄化槽の処理機能が低下していないかを検査し、浄化槽の周辺機器を調整するために行います。
保守点検の回数は年に3~4回が目安です。
ただし、浄化槽の種類や処理方式によって実施期間が異なります。
以下、浄化槽の種類別に見る保守点検の実施期間です。
浄化槽の種類 | 処理方式 | 年間実施期間(処理対象人員20名以下の場合) |
単独処理浄化槽 | 全ばっ気式 | 3月 |
単独処理浄化槽 | 分離接触ばつ気方式、分離ばつ気方式又は単純ばつ気方式 | 4月 |
合併処理浄化槽 | 分離接触ばつ気方式、嫌気ろ床接触ばつ気方式又は脱窒ろ床接触ばつ気方式 | 4月 |
自治体から委託を受けている業者に依頼すると、点検時期に業者から保守点検の通知が届きます。
②清掃費:2万6,000円~
浄化槽の清掃費は2万6,000円〜です。
浄化槽は使用するうちに、泥などの汚れが蓄積します。
汚れは浄化機能の低下につながるため、定期的にバキュームカーによる吸い出しや、周辺機器の洗浄が必要です。
浄化槽の清掃が必要な頻度は年1回で、清掃時期に委託業者から通知が届きます。
ただし、全ばっ気方式の浄化槽は、半年に1回以上の清掃が必要です。
清掃費用は委託業者によって異なります。
自治体によっては、浄化槽の清掃に対して2~3万円の補助が出ます。
③法定検査費:5,000円~
浄化槽の法定検査にかかる費用は5,000円〜です。
法定検査は、浄化槽の保守点検や清掃が定期的に実施されているか調べるために行われます。
法定検査が行われる時期は、以下の通りです。
検査の名称 | 時期 |
設置後等の水質検査 | 浄化槽を使い始めて3カ月~5カ月以内 |
定期検査 | 毎年1回 |
法定検査は知事が指定する業者が、以下3つの項目ごとに浄化槽が正常に働いているか確認します。
項目 | 内容 |
外観検査 | 水の流れの確認、悪臭・虫が発生していないかなど |
水質検査 | BODなどの水質測定 |
書類検査 | 保守点検と清掃の確認 |
法定検査の時期になると、保守点検を依頼した業者から通知が届きます。
④ブロアの電気代:7,000円~
浄化槽のブロアの電気代は年間7,000円~です。
ブロアとは、浄化槽内にいる水を浄化する働きをする微生物に、酸素を送り込むためのポンプです。
ブロアは日中の外出時や夜間も動かさなければならず、電気代の高騰で家計の負担になる可能性があります。
そこで、ブロアの電気代を節約する方法は、以下2つです。
- 消費電力の低いブロアに交換する
- タイマーで間欠運転に切り替える
ただし、上記の措置を行っても、法定検査で基準値を下回らないように確認が必要です。
⑤故障した場合の修理費用:7万円~
浄化槽が故障したときの修理費用の相場は、工事費込みで7〜12万円を見積もりましょう。
浄化槽本体の耐久年数は30年ほどですが、周辺機器の耐久年数は15年ほど。
台風や洪水などの自然災害で故障するケースもあります。
特に浄化槽を動かす「ブロア」の部分は故障しやすく、悪臭や異音の原因になります。
ブロアはホームセンターで2万円程度で手に入り、自分でも交換が可能です。
浄化槽の撤去費用は6万円~
浄化槽の撤去には、6万円ほどかかります。
浄化槽の種類や撤去方法によって費用が変動するため、撤去の際には以下をチェックしましょう。
- 撤去方法により金額が上下する
- 単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換費用は約90万円
それぞれ詳しく解説します。
撤去方法により金額が上下する
浄化槽の撤去方法には、以下の3種類があります。
撤去方法 | 施行内容 |
全撤去 | 汚水や浄化槽の本体、周辺機材を全て撤去 |
埋め戻し | 汚水と浄化槽の一部を撤去 |
埋め殺し | 汚水のみを撤去し、浄化槽本体は地中に残す |
撤去費用としては全撤去が最も高額で、埋め殺しが最も安いです。
ただし、埋め戻しや埋め殺しは不法投棄に該当するリスクがあるため、全撤去が推奨されています。
また、埋め戻しや埋め殺しを行った土地は資産価値が下落する恐れがあります。
新しい家を建てるときに地中に残った浄化槽の撤去を行う必要があり、追加工事費が発生するためです。
単独処理浄化槽→合併処理浄化槽への交換費用は90万円~
単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への交換費用は、90万円〜です。
環境庁が提示した交換費用の一例を見てみましょう。
【単独処理槽の撤去費用例(5人槽)】
内訳 | 費用例 |
清掃 | 29,900円 |
撤去工事 | 24,000円 |
処分 | 39,400円 |
合計 | 93,300円 |
【新しい浄化槽の設置費用例】
人槽規模 | 価格 |
5人槽 | 80.4万円 |
7人槽 | 98.4万円 |
10人槽 | 130.5万円 |
工期は3日~1週間程度です。
単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への交換は国で推奨されている事業なので、自治体の補助金が利用できる可能性があります。
賃貸一戸建の浄化槽の維持管理費用は借主負担
賃貸一戸建ての場合、浄化槽の維持管理費用は基本的に居住者である借主が負担します。
定期的なメンテナンスにかかる費用は、上記で紹介したように6万円からです。
ただし、契約書の内容によっては貸主が負担するケースもあります。
経年劣化で浄化槽が故障した場合、修理費用は貸主の負担であることが多いでしょう。
賃貸アパートでは、浄化槽を含む基本設備の維持管理は貸主の責任です。
維持管理費用は家賃や共益費として、借主へ上乗せ請求されます。
浄化槽の設置に利用できる助成制度
浄化槽の設置費用を安くするには、助成制度を活用しましょう。浄化槽の助成制度には、以下3つがあります。
- 自治体からの新築補助金
- 自治体からの転換補助金
- 市営浄化槽
浄化槽の新規設置や交換工事を検討している人は要チェックです。
①自治体からの新築補助金
新築を対象とした浄化槽設置費用の助成制度です。
新築補助金は自治体が独自に設けており、利用できないことも多いので、事前に確認しましょう。
以下は新築補助金が出る、岡山市の支給例です。
人槽規模 | 補助金額 |
5人槽 | 332,000円 |
6~7人槽 | 414,000円 |
8~10人槽 | 548,000円 |
補助金額や補助金の受け取り条件は、自治体により異なります。
居住エリアが下水道整備地区にある場合は、新築補助金は受けられないことがあります。
また、新築でも建売物件や増築による浄化槽の設置は、対象外とされることがあるので注意しましょう。
さらに、自治体の助成金は予算に達してしまうと募集終了日を待たずに受付を締め切ることが通常です。
「まだ大丈夫」と思うのではなく、利用したいと思ったらスピーディーに申し込むことが大切です。
②自治体からの転換補助金
単独処理浄化槽から合併処理浄化槽に転換する際は、自治体の転換補助金が利用可能です。
転換補助金は国庫助成制度を利用しているため、新築補助金よりも多くの自治体で利用できるでしょう。
国庫助成制度とは、自治体が主体となって行う事業に対して、国が費用の一部を助成する制度です。
国庫助成制度を利用した助成制度では、浄化槽設置費用の4割を国や自治体が負担(自治体によって上限あり)します。
補助金の申請手順は、以下6ステップです。
- 自治体に浄化槽設置の申請をする
- 補助金交付申請書を提出する
- 自治体から補助金交付確定の通知が来る
- 浄化槽設置工事を開始する
- 工事が完了したら自治体へ請求書を提出する
- 補助金の交付を受ける
自治体によっては、上記の助成金制度以外にも補助金が申請できるので、窓口に問い合わせましょう。
③市営浄化槽
市営浄化槽は、個人宅に自治体が浄化槽を設置・管理してくれる制度です。
市営浄化槽の対象エリア内に住居がある場合、補助金制度は利用できません。
市営浄化槽では、設置費用の9割を国や自治体が負担します。
残りの1割は「分担金」として申請者が支払います。
市営浄化槽の設置後は、申請者は使用料として以下3つの料金を市町村へ毎月支払う必要があります。
- 水道代
- 電気料金
- 維持管理費用
市営浄化槽の維持管理は自治体が行うため、申請者が独自に業者と委託契約する必要はありません。
浄化槽の修理や交換費用を抑えたいなら「ミエルモ」に相談しよう
主に下記のような場合、浄化槽の修理や交換に火災保険が適用される可能性があります。
- 火災によって破損した
- 落雷でポンプが破損した
- ブロワが盗まれた
ただし、契約プランにより補償範囲は異なるので、加入している契約の内容を確認する必要があります。
浄化槽の修理や交換で火災保険を利用するなら、申請サポート業者に相談するとよいでしょう。
数ある申請サポート業者のなかでも「ミエルモ」がおすすめです。
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浄化槽の代表的な種類は2つ
浄化槽には、以下の2種類があります。
- 合併処理浄化槽
- 単独処理浄化槽(汲み取り式)
浄化槽は微生物の働きで水をきれいにする設備ですが、上記2つは機能が大きく異なります。
それぞれのメリットとデメリットとともに、特徴を見ていきましょう。
①合併処理浄化槽
合併処理浄化槽とは、トイレで流されるし尿や、台所や風呂などの生活排水をまとめてきれいにする浄化槽です。
下水道が整備されていない地域では、各住宅の地下に設置しなければなりません。
メリットとデメリットは、以下の通りです。
メリット | 生活排水の汚れを90%除去できる
下水道処理場なみの機能がある |
デメリット | 住宅敷地内に設置スペースが必要
処理能力に限界がある |
合併処理浄化槽は、水の汚れの90%を除去し、川へと排出します。
平成13年4月1日の浄化槽法改正により、現在「浄化槽」として認められているのは合併浄化槽のみです。
令和2年には、全国で10万基を超える合併浄化槽が新規設置されました。
②個別または単独処理浄化槽(汲み取り式)
単独処理浄化槽はトイレの汚物を処理するための浄化槽です。
台所や風呂から出た排水は浄化せず、そのまま川に流します。
平成13年の浄化槽法改正により、現在単独処理浄化槽の新規設置はできません。
現在設置されているものは、合併処理浄化槽への交換が進められています。
以下、個別浄化槽のメリット・デメリットです。
メリット | トイレを水洗化できる |
デメリット | 排水の浄化能力が低い
古くなった浄化槽が環境破壊などトラブルを起こしている |
単独浄化槽と混同されることのある汲み取り式とは、いわゆる「ぼっとん便所」です。
タンクにし尿を貯めて定期的にバキュームカーで処理する仕組みで、厳密には浄化槽ではありません。
合併処理浄化槽の2つの処理方法
家庭で使用される小型の合併処理浄化槽には、下記2種類の処理方法があります。
- BOD除去型(嫌気ろ床接触ばっ気方式)
- 高度処理型(脱窒ろ床接触ばっ気方式)
浄化槽は、国土交通大臣から認定を受けた工場で作られたものを使用しなければなりません。
以下でそれぞれの特徴を解説するので、浄化槽選びの参考にしてください。
①BOD除去型(嫌気ろ床接触ばっ気方式)
BOD除去型とは、微生物の働きで汚水を除去する浄化槽です。
BOD除去型の合併処理浄化槽は、以下4つの槽に汚水を通すことで水をきれいにします。
槽の名称 | 働き |
嫌気ろ床槽 | 水の汚れを固形物と液体に分解する |
接触ばっ気槽 | 微生物の働きで水の汚れを浄化する |
沈殿槽 | 水に残った汚れを分離し接触ばっ気槽に送り返す。
きれいになった水は次の槽に送る |
消毒槽 | 塩素剤で水を滅菌消毒し、河川に流す |
BOD除去型は、最もメジャーな小型合併処理浄化槽の処理方法です。
BOD除去率は90%以上で、下水道と同程度の処理能力を持ちます。
②高度処理型(脱窒ろ床接触ばっ気方式)
高度処理型は、BODに加えて水中に含まれる窒素の除去が可能です。
嫌気ろ床槽の代わりに脱窒ろ床槽があり、水の汚れを分離・浄化するのと同時に窒素を除去します。
接触ばっ気槽以下の働きはBOD処理型と同じです。
高度処理型は湾岸やダム集水域など、プランクトンが発生しやすい地域で導入されます。
窒素やリンが多い海域では、プランクトンが異常繁殖して赤潮が発生するため、BOD除去型では不十分です。
全国にある合併処理浄化槽のうち、30%近い割合で高度処理型が導入されています。
浄化槽の新規設置から廃止までの流れ
浄化槽の新規設置から廃止までの流れは、以下6ステップです。
- 浄化槽の新規設置の届出
- 浄化槽の設置工事
- 浄化槽の使用開始の届出
- 浄化槽の保守点検と法定検査
- 浄化槽の清掃
- 浄化槽の交換・廃止の届出
届出以外に保守点検や掃除など浄化槽の維持・管理の義務が発生します。
以上の流れを怠るとペナルティが科されるので、浄化槽の管理者は必ずチェックしましょう。
①浄化槽の新規設置の届出
住居を新築した場合、浄化槽の設置について以下いずれかの方法で自治体に申請をする必要があります。
- 業者が「建築確認申請書」上で申請する
- 住宅の所有者本人が直接「浄化槽設置届出書」を提出する
建築確認申請書とは、建物が法律に従って建てられているかを確認するための書類です。
建築確認申請書は業者が提出しますが、小屋や倉庫には建築確認が不要です。
浄化槽を設置する場合には、住宅の所有者本人が浄化槽設置届出書を提出しなければなりません。
また、浄化槽の構造や規模を変更したときや、撤去の際にも申請が必要です。
申請には自治体ごとに期日があります。
②浄化槽の設置工事
浄化槽の設置は「特例浄化槽工事業」や「浄化槽工事業」に登録された業者のみができます。
また、設置工事には「浄化槽設備士」の資格者の監督が必要です。
登録業者は浄化槽設置の申請を自治体に行い、手順通りに設置工事や電気・配管工事をすることが環境庁により定められています。
浄化槽は長期間に渡って使用されるため、国の認可を受けた登録業者が適切に設置しなければなりません。
登録業者は各自治体のHPより確認ができます。
③浄化槽の使用開始の届出
新たに設置した浄化槽の使用を開始した場合には、浄化槽使用開始報告書を自治体の窓口に提出しましょう。
浄化槽法により、浄化槽の使用開始日から30日以内に提出します。
浄化槽使用開始報告書は自治体ホームページから取得可能です。
使用開始報告書には、以下の内容を記載します。
- 届出の年月日
- 浄化槽の規模
- 浄化槽の設置場所
- 浄化槽の管理を委託する業者名
浄化槽の清掃や保守点検を委託する業者を記入する欄があるため、報告書の提出前に業者と契約しましょう。
④浄化槽の保守点検と法定検査
保守点検や清掃をするだけでなく、法定検査も受けなければなりません。
保守点検や清掃は、浄化槽の機能を維持するためのメンテナンスです。
法定検査では、保守点検や清掃が適切に行われていたかを確認します。法定検査を行う時期は、以下2パターンです。
- 浄化槽の使用開始後3カ月を経過してから5カ月以内
- 初回の検査以降は年1回
法定検査は浄化槽の所有者が自分で申し込まなければなりません。
ただし、保守点検を業者と委託契約していれば、法定検査の時期を知らせる通知が送られます。
⑤浄化槽の清掃
浄化槽の清掃や保守点検に資格は不要なので、自分ですることも可能です。
ただし、浄化槽の管理は自治体から許可を受けた業者への委託が推奨されています。
浄化槽は1年に1回清掃が義務付けられていますが、実施する時期は浄化槽の種類によりさまざまです。
許可業者と委託契約をすれば、清掃を定期的に実施してもらえます。
清掃後に業者から渡される「清掃の記録表」は3年間保存しましょう。
清掃の記録表は法定検査で提出が必要で、浄化槽の所有者には保管する義務があります。
⑥浄化槽の交換・廃止の届出
単独処理浄化槽から合併処理浄化槽に転換するときや、住んでいるエリアに下水が整備されたときは、届出が必要です。
浄化槽変更届出書または浄化槽使用廃止届出書を取得し、自治体の窓口へ提出しましょう。
交換や撤去の届出は、自治体が浄化槽の設置状況を確実に把握するために必要です。
浄化槽廃止の届出は、廃止後30日以内に行います。
廃止の前に、業者による浄化槽内の汚泥の引き上げや消毒などの最終清掃が必要です。
また、浄化槽変更届の提出期限は自治体によって規定されているので確認しましょう。
1年以上の長期不在時は届出を出せば浄化槽を休止できる
1年間を目安とした長期不在や、住宅を売却するときは、自治体へ届出を提出すれば浄化槽の休止が可能です。
浄化槽の休止制度は、令和2年の浄化槽法改正により新設されました。
以前は不在時にも浄化槽の管理義務が発生していましたが、休止届によって浄化槽の保守点検などが免除されます。
ただし、以下の2点に注意が必要です。
- 浄化槽休止の前に浄化槽の清掃を行う
- 浄化槽の管理者本人が届出を提出する
また、浄化槽の使用を再開するときには再開届を提出する必要があります。
提出期限は浄化槽を再開した日から30日以内です。
ただし、旅行や出張などで一時的に家を不在にするときには、浄化槽ブロアの電気を切ってはいけません。
ブロアは、浄化槽に生息する微生物に酸素を送り込む装置です。
ブロアの電気を切ると、浄化槽内の微生物が減少し、浄化槽の機能が低下します。
また、浄化槽内部の汚水が腐り、悪臭の原因になります。
浄化槽を長持ちさせるための注意点3選
浄化槽を長く利用するために、以下3つの点に注意しましょう。
- トイレットペーパー以外の紙や食用油を浄化槽に流さない
- 食器用洗剤やカビ取り剤は適量を使う
- 浄化槽のマンホール上に重いものを置くときは注意が必要
普段の生活で意識的に取り組むと、浄化槽が長持ちします。
浄化槽の交換には多額の費用がかかるため、大切に使いましょう。
①トイレットペーパー以外の紙や食用油を浄化槽に流さない
トイレットペーパー以外の紙類や食用油を、浄化槽に流さないよう気を付けましょう。
浄化槽の処理能力には限界があり、紙や油は分解できないまま川に排水されてしまうことがあります。
浄化槽で汚れを分解するのは、有機物をエサとする微生物です。
ただし、油や不溶性の紙などは微生物に悪影響を及ぼし、死滅させてしまう可能性があります。
そうすると、分解できなかったゴミは浄化槽内部で汚泥として蓄積し、浄化槽の処理性能の低下につながります。
食用油は紙に吸わせたり、凝固剤で固めて燃えるゴミとして処分したりしましょう。
トイレットペーパーは適切な量を使用し、オムツやティッシュペーパーはトイレに流してはいけません。
②食器用洗剤やカビ取り剤は適量を使う
食器用洗剤やカビ取り剤は適量を使いましょう。
市販されている通常の洗剤なら、除菌効果があっても浄化槽内の微生物に影響はありません。
ただし、塩素系漂白剤は大量に使うと微生物の働きを弱めたり、死滅させたりする可能性があります。
浄化槽を長持ちさせるなら、中性洗剤や「浄化槽対応」の表示がある洗剤を選びましょう。
また、トイレや風呂の汚れがひどい部分は、アルコールを吹きつけて汚れを拭き取る方法がおすすめです。
③浄化槽のマンホール上に重いものを置くときは注意が必要
浄化槽のマンホール上には、重いものを置かないようにしましょう。
浄化槽が埋められているスペースを駐車場にする場合は、施工業者にあらかじめ相談が必要です。
浄化槽が自動車の重みに耐えられるよう補強工事を行えば、普通車なら駐車しても問題ありません。
ただし、マンホールにタイヤが載ってしまうと、マンホールの蓋が壊れたり陥没したりする危険があります。
また、物置や倉庫などの移動できない構造物を、浄化槽のマンホールにかかるように設置することは禁止されています。
マンホールの蓋が開閉できず、清掃や保守点検の妨げになるためです。
浄化槽か下水道エリアか?新築時に考慮すべき6つのこと
新築を建てるときは、下水道か浄化槽エリアどちらにするかという観点でも検討しましょう。
具体的に考慮すべき点は、以下の6つです。
- 初期費用は浄化槽の方が安い場合がある
- 使用料は下水道の方が安い場合がある
- 下水道が整備された場合1年以内に切り替え工事が必要
- 下水道の方が汚水の処理能力は高い
- 浄化槽の方が災害に強い
- 浄化槽を設置できる場所は決まっている
下水道が通っている地域に家を建てる場合は、無条件で下水道になります。
そのため、下水道か浄化槽かを自分で選ぶことはできません。
以下で詳細を見ていきましょう。
①初期費用は浄化槽の方が安い場合がある
浄化槽の設置工事の方が、下水道の引き込み工事より安く済む場合があります。
下水道の引き込み工事価格は、新築と「公共ます」の距離で決まります。
以下、各工事費の概要です。
工事内容 | 工事費 |
下水道引込工事(近くに公共ますあり) | 25~50万円 |
下水道引込工事(公共ますなし) | 50~100万円 |
浄化槽設置工事 | 80万円~ |
公共ますとは、台所やトイレなど家庭から出た汚水を1カ所に集めて、下水道本管に流すための容器です。
公共ますが道路の反対側など遠い場合は、100万円近い工事費用がかかることがあります。
②使用料は下水道の方が安い場合がある
1人暮らしをしている場合、浄化槽を設置するよりも下水道の方がお得なケースがあります。
浄化槽は保守点検など維持管理費がかかりますが、下水道は終末処理場で汚水を浄化するため、維持費は不要です。
ただし、下水道は使用料を支払わなければなりません。
下水道使用料は水道料金と連動しています。水をたくさん使うファミリー世帯ほど、浄化槽のメリットを感じやすいでしょう。
地域によっては、下水道環境が整備されていないエリアもあります。
浄化槽を設置したあとに下水道が整備されると、浄化槽の撤去と下水道引き込み工事が必要です。
下水道の整備計画は、各自治体のHPやパンフレットで公開されているため事前に確認しましょう。
③下水道が整備された場合1年以内に切り替え工事が必要
エリア内に下水道が新しく整備された場合は、1年以内に浄化槽から下水道への切り替え工事が必要です。
下水道法では、切り替え工事の期間を以下のように定めています。
- 公共下水道の共用が開始された場合は、遅滞なく排水設備を設置しなければならない(第十条)
- くみ取り便所が設けられている場合は、3年以内に水洗便所に改造しなければならない(第十一条の三)
法律上は「遅滞なく」とされていますが、条例で切り替え工事期間を1年以内と定める自治体が多いです。
期限を過ぎても切り替え工事を行わない場合は、自治体から勧告を受けるケースがあります。
家を建てるときは、今後数年以内に下水道が整備される予定がないかもチェックしましょう。
余計な切り替え費用の節約に繋がります。
④下水道の方が汚水の処理能力は高い
合併処理浄化槽と下水道はどちらも汚水の処理能力は高いですが、汚水を元の水質まで戻せるのは下水道です。
汚水の処理能力は以下の通りです。
汚水処理方法 | BOD除去率 |
下水道 | 99% |
合併処理浄化槽 | 90% |
単独処理浄化槽 | 60% |
BOD除去率で比較すると、下水道が最も優れていることがわかるでしょう。
また、浄化槽は水質の悪化や部品の故障により悪臭が発生するケースがあります。
下水道は最終処理場で汚水を管理・処理するため、臭いはほとんど発生しません。
⑤浄化槽の方が災害に強い
地震などの災害に強いのは浄化槽です。
被新潟中越地震の調査によると、ほとんどの浄化槽が通常通りに使用できたことがわかっています。
浄化槽は各家庭ごとに設置されているため、被災しても1週間〜10日程度で復旧可能です。
下水道は下水管と処理施設が一本につながった大掛かりなシステムなので、復旧に半年ほどかかるケースがあります。
また、浄化槽は構造的に地震に強く設計されています。
本体に使われる素材は、頑丈な強化プラスチックです。
ブロア以外の周辺機器が少ないシンプルな造りなので、地震による地盤変化に耐えられます。
⑥浄化槽を設置できる場所は決まっている
浄化槽の設置場所は、風呂やトイレなどの水回りの近くと決められています。
敷地の間取り上邪魔だからと言って、敷地の隅に設置するといったことはできません。
間取りを検討する際は、ハウメーカーの設計士に浄化槽の場所が影響しないかを確認しましょう。
浄化槽のFAQ
基本的には、本体が完成する前でも後でも問題ありません。心配であれば、施工業者に確認しましょう。
水道料金に「下水道使用料」が含まれているかでわかります。明細書に左記料金が含まれている場合は、浄化槽は使われていません。
まとめ:浄化槽にかかる年間維持費を把握しておこう
浄化槽を設置すると、以下3つの費用がかかります。
- 新築時の浄化槽の設置費用は約80万円~
- 浄化槽の年間メンテナンス費用は約6万円~
- 浄化槽の撤去時の費用は6万円~
浄化槽の設置コストを削減するには、自治体の助成制度を活用しましょう。
また、浄化槽の処理能力を長く維持するために、日頃から適切な管理をすることが大切です。
なお、浄化槽の設置には火災保険を利用できる場合があります。
火災保険の申請には、建築や保険の専門知識が必要なので、申請サポート業者への依頼をおすすめします。
受け取った給付金は自由に使えるので、ぜひ以下のボタンをタップして無料診断を受けてみましょう。
※賃貸・区分・保険未加入は対象外
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